ICT教育とは?取り組むメリットと今後の課題・解決方法を解説
ICT教育NEXT GIGAICT教育とは、端末や情報通信技術を活用して行われる教育を指す言葉です。
この記事では、ICT教育の基本的な意味や取り組むことのメリット、今後の課題と解決方法などを解説します。
ICT教育とは
ICT教育の概要
ICT教育におけるICTとは「Information and Communication Technology」のことであり、日本語では「情報通信技術」という意味になります。IT(Information Technology)が単に情報技術のことを指すのに対し、ICTでは「Communication」の部分が重視されていると考えられます。
つまり、ICTは情報を効率良く処理するといった意味だけでなく、インターネットを活用した人と人とのコミュニケーションを大事にするための概念です。現代社会においてはスマートフォンなどのデジタル端末を利用して、ビデオ会議に参加したりSNSでコミュニケーションをとったりすることは一般的になっています。
そうしたICT活用の流れを教育分野にも活かそうとするのがICT教育であり、教育のデジタル化を指します。電子黒板・パソコン・タブレットなどのIT機器を活用することで、インターネットを介した学習機会を提供します。
ICT教育が目指すもの
ICT教育を実施する目的の一つとして、「情報活用能力の育成」が挙げられます。文部科学省が公表している「学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力の育成」という資料においては、情報活用能力は以下のように位置づけられています。
「学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理・比較したり、得られた情報をわかりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であり、さらに、このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や、プログラミング的思考、情報モラル、情報セキュリティ、統計等に関する資質・能力等も含むものである。」
【引用】文部科学省「学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力の育成」
上記からわかるように、これからの時代を生きるこどもたちにとって、情報を上手に活用するための知識・技能は、必要不可欠な能力と位置付けられています。インターネット上で、こどもたちが自ら考え、正しく判断して行動できるようになるための、デジタルシティズンシップ教育も重要です。
ICT教育に取り組むメリット
ICT教育に取り組むことで得られるメリットとして、次の4つの点が挙げられます。
ICT教育に取り組む4つのメリット
- 学びのスタイルの変化に対応できる
- 児童生徒の学習意欲が高まる
- 教員の業務負担の軽減につながる
- 情報共有を手軽に行いやすくなる
各メリットについて解説します。
学びのスタイルの変化に対応できる
ICT教育が注目されている理由として、従来の「教員が児童生徒に教える」といった学習スタイルから、「児童生徒が自主的に学ぶ」機会の提供が重視されていることが挙げられます。IT化が進む現代において、児童生徒が自ら情報と接し、活用していく教育が求められているといえます。
一人ひとりの理解度に合わせた個別最適な学びや、デジタル教材などを活用した協働的な学びという観点からもICT教育への取り組みは重要です。ICT教育を通じて、児童生徒の主体的な学びや、教員と児童生徒の間の双方向的なコミュニケーションが活発に行われることが期待されています。
児童生徒の学習意欲が高まる
ICT教育を導入することで、児童生徒の学習意欲の向上が期待できます。タブレットなどのデジタル端末を活用すれば、動画や音声などのコンテンツを学習に取り入れることが可能です。
たとえば、理科の授業で動画を用いれば、実験の流れを視覚的に理解しやすくなるでしょう。さらに、社会の授業で児童生徒の端末で地図を表示すれば、拡大してそれぞれの手元で気になる箇所に書き込むこともできます。
従来の授業では行えなかった学びの機会を提供でき、学習に対するモチベーションを高められるでしょう。魅力的なコンテンツを活用して、理解できるまで繰り返し学ぶことで、多様な資質を持った児童生徒を誰一人取り残さない学習につなげていけます。
教員の業務負担の軽減につながる
ICT教育の導入は、教員にとっても大きなメリットがあります。デジタル教科書をはじめとしたデジタル教材を活用することで、資料の提示やプリントを配布する準備の時間を削減することができます。
また、校務や授業準備において、ICTを活用して教員間で教材や指導案の共有を図ることで、業務時間の短縮につなげることも可能になります。
協働的な学びにつながる
ICT教育の導入は教員と児童生徒、児童生徒同士のやりとりも円滑にしていきます。デジタル端末を介して、プラットフォームやツールを共有すれば、必要な情報を得たり、同じ資料をクラス全員で共同編集したりすることがスムーズに行えます。
必要なデータをすぐに共有できる環境を整えることで、こどもたちがお互いに教え合い学び合う協働的な学習につながります。
ICT教育のポイント
ICT教育を推進するメリットは前述の通り数多くありますが、従来の学習スタイルも踏まえた上で、目的に応じて使い分けていく必要があります。
すべての学習がICT教育に置き換わるわけではなく、アナログとデジタルのそれぞれを、授業のねらいに応じて適切に活用していくことが大切です。
ここでは、ICT教育を推進するための取り組みについて解説します。
教員の取り組み
「主体的・対話的な学び」や「協働的な学び」のためには、ファシリテーターとしての教員の役割が重要とされています。児童生徒が持つ経験値や知識、感情を尊重し、寄り添い、問いかけたり、こどもの興味・関心や主体性を重視する授業作りに、ICTを活用することができます。児童生徒と共に学び合い、教え合いながら取り組みを進めていくのが重要だと考えられています。
また、校内だけに留まらず、各種勉強会や研修で情報を得ることも大切です。他校の取り組みや事例などを参考にすれば、より活用の幅も広がります。
さらに、ICTを通じて児童生徒が学んだことを教員がどのように評価していくのかも、併せて考える必要があります。特に協働学習などでは、こどもたちがそれぞれに学習した成果を、過不足なく評価するために、学習の過程も合わせた評価基準を見つけていかなければなりません。
学校としての取り組み
上記のように、教員一人ひとりの取り組みも大事ですが、学校全体での取り組みもとても重要です。
学校全体で取り組むべきこととして、まずはカリキュラム・マネジメントの中に、適切にICT教育を組み込んでいくことが挙げられます。ICT教育を活用して、各学校の教育活動の質の向上を図っていく必要があります。
また、教員の業務負担を軽減させることも重要です。具体的には、紙の書類作成を減らしてペーパーレス化したり、必要な情報にすぐアクセスできるようクラウド化を推進するなどの校務のDX化が挙げられます。
まとめ:ICT教育によって新たな学びの機会を提供しよう
IT化が進む現代社会において、教育現場でICT教育を推進していくことには大きな意義があります。
これまでの教育現場で蓄積されてきた知見とデジタル端末を介した学習をうまく組み合わせることで、授業の質をより向上させていくことが大切です。