電子図書館を導入するメリットと活用方法を紹介
電子図書館近年では、公共図書館はもちろんのこと、学校でも「電子図書館」を利用できる環境を整える自治体が増えています。その背景には、読書バリアフリー法の制定やGIGAスクール構想による教育のICT化などがあります。
文部科学省が2023年に策定した第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が掲げている以下の4つの基本的方針の実現にも、電子図書館は寄与できると考えられています。
Ⅰ 不読率の低減
Ⅱ 多様な子どもたちの読書機会の確保
Ⅲ デジタル社会に対応した読書環境の整備
Ⅳ 子どもの視点に立った読書活動の推進
出典:文部科学省「第五次 子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」
このコラムでは、特に学校での1人1台端末の環境における電子図書館の活用にフォーカスをして、電子図書館を使うメリットや活用方法について解説します。
電子図書館の概要
電子図書館とは、図書館が所蔵している本や映像などのメディアを、インターネットを介して利用できるサービスのことを指します。図書館に直接出向かなくても、デジタル化されたメディアを利用できるのが特徴です。
学校での電子図書館の利用推進においては、2022年8月に文部科学省から、「1人1台端末環境下における学校図書館の積極的な活用及び公立図書館の電子書籍貸出サービスとの連携について」の事務連絡が出されています。
この事務連絡において文部科学省は、下記の2点を求めました。
- 児童生徒の学習活動の充実のための学校図書館の環境整備と、学習活動における学校図書館の積極的な活用
- (すでに一部の自治体で実施されている)児童生徒に公共図書館の電子書籍貸出サービスのIDを一括で発行する取組の積極的な検討
出典:文部科学省「1人1台端末環境下における学校図書館の積極的な活用及び公立図書館の電子書籍貸出サービスとの連携について」
これを受けて全国の自治体では、1人1台端末等のICT環境を利用した学校図書館の環境整備の検討が進んでいます。
電子図書館を導入するメリット
電子図書館を導入する主なメリットを具体的に紹介します。
時間や場所を気にせずに利用できる
電子図書館であれば、児童生徒は、図書館の開館日や開館時間、天候や移動距離などを気にせずに利用することが可能です。加えて、長期休業期間中や、感染症の蔓延や災害の発生時にも、インターネットを通じて、電子書籍の検索や貸出、返却、閲覧といったサービスが受けられます。
加えて、一般的な図書館を利用するときと同じように、人気のある本のランキングやテーマ別の特集ページなどから本を探すこともできます。
紙の書籍とは異なる新しい読書体験ができる
電子書籍の中には、音声読み上げ機能や文字サイズの拡大機能、ビューワーの背景色やフォントの設定の変更機能などアクセシビリティに対応した機能を活用できるものもあります。そのため、従来の本のかたちでは読書が困難だった児童生徒にとって、より良い読書体験につながることが期待できます。
授業内でも電子書籍を活用できる
電子書籍は授業においても活用できます。電子書籍の一部を画面に映したり、文字をハイライトにしたまま音読したりといった使い方が可能です。また、電子黒板などの大きな画面に表示することで、 文字やイラストの細部までを閲覧することもできます。一部の出版社が提供する、同時貸し出し冊数無制限の「読み放題パック」などを利用して、同じ本を同時に読むことができる環境では、より授業の中での活用の幅も広がります。
家庭学習でも活用することができる
電子図書館を利用できる環境を整えれば、学校内の学習だけでなく、家庭学習にも活用できます。
時間や場所を選ばずにアクセスできる環境があることで、児童生徒が端末を通じて家での読書や本を活用した学習ができるので、家庭学習での選択肢が増えます。
電子図書館の課題
このように、様々なメリットがある電子図書館ですが、一般的に以下のような課題も挙げられています。
借りられる冊数に限りがある
電子図書館は、一般的な図書館における紙の書籍の貸出と同様に、利用者が一度に借りられる冊数に限りがあります。また、一度に同じ本を借りられる人数にも制限があることに注意が必要です。
ただし、前述の同時貸し出し冊数無制限の「読み放題パック」を導入している自治体では、この課題は部分的に解消されています。
子どもにとって使いづらい場合がある
電子でない一般的な図書館では、児童書のコーナーと大人向けの本のコーナーが分かれて配架されています。また、紙の書籍であれば、装丁などから児童書と大人向けの本を容易に区別することができます。一方で、電子図書館ではそのようなゾーニングが困難である場合や、画面上に表示される表紙の画像だけでは区別がつかない場合も多く、大人向けの本を子どもが意図せず手に取ってしまうといったケースがあります。子どもの発達段階に合わせた読書体験を届けるのが難しいことが、電子図書館の課題の一つです。
また、子どもにとって使いにくいUIが多いことも課題として挙げられます。大人であれば問題なく利用できたとしても、操作性やデザインの面で子どもが一人で使いこなすことが難しい電子図書館もあります。
その他の勘案事項
電子図書館の導入における勘案事項として、以下も挙げられます。これらの課題を考慮したうえで電子図書館を導入することが大切です。
- 図鑑や絵本など、多くの利用者にとって端末で読むのが最適ではないと感じられる本もある。
- 長時間利用した際の視力への影響などを心配する声もある。
- すべての書籍が電子化されているわけではない(紙の書籍でしか読めない書籍が多い)。
- システム利用料の他に、コンテンツ購入費用が継続的に発生するため、安定した予算源を確保する必要がある。
近年では、予算確保や運用の効率化によるコスト削減のために、広域電子図書館の導入を検討する自治体もあります。
電子図書館の利用促進におけるポイント
児童生徒の積極的な利用を促すためのポイントを解説します。
利用する機会を提供する
まずは、朝の読書時間や各教科の授業などを通じて電子図書館を利用する機会を提供することが大切です。電子図書館の利用方法や電子図書館で読むことのできる本の紹介など、積極的な情報発信も効果的でしょう。
電子書籍以外のコンテンツを充実させる
電子図書館の利用促進のためには、コンテンツの充実も必要です。それぞれの図書館が独自で設定した切り口で本をおすすめする特集や、デジタルアーカイブを利用した地域独自の資料を提供するコーナーを設ける自治体も多くあります。
また、電子書籍だけでなく、オーディオブックや映像教材などデジタルならではのコンテンツを児童生徒の関心に合わせて充実させることも大事です。
家庭学習での活用もうながす
電子図書館は学校だけでなく家庭でも利用できるので、家庭学習や家での読書においても活用をうながすことが重要です。保護者の方に、電子図書館を利用することでどのような学習効果を得られるのか周知をはかることも大切です。
読みやすい方法でメディアを選んでもらう
電子図書館の導入は、「電子書籍がよいか、紙の書籍がよいか」といった二項対立のもとに検討されるべきものではありません。子どもたちの読書体験の新たな選択肢の一つとして電子図書館を捉えることが大切です。
児童生徒には、自身の発達段階や読みたい本に応じて、読書のための手段(メディア)を選択していく意識を身につけてもらうことが大事です。
電子図書館を活用して子どもと本との接点を増やし、豊かな読書環境を届けよう
ここまで紹介してきたように、電子図書館を利用すれば、いつでも好きなときに本に親しむことができます。
冒頭で述べたとおり、電子図書館の導入は、不読率の低減や多様な子どもたちの読書機会の確保、デジタル社会に対応した読書環境の整備、子どもの視点に立った読書活動の推進を実現するための有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
ポプラ社では、「本が好きな子にも苦手な子にも、もっと本を好きになってほしい」という想いで、38社4,300冊以上の子どものための本が読める読み放題型電子図書館「Yomokka!(よもっか!)」を提供しています。
『Yomokka!』はサブスクリプションサービスのため、一般的な電子図書館と比較すると次のようなメリットがあります。
- 1作品を同時に読める人数に上限がないので、同じ作品を読書の時間や授業中にクラス全員で読むことができる。
- 一人が一度に読める冊数が無制限で、読みたい本を好きなときに好きなだけ読める。
- 書誌の対象学年が明示されているので、子どもが自分に合った本を選びやすい。
- 子どもたちでも分かりやすいインターフェースで、直感的に使うことができる。
- デジタルならではの、本と出会える機能がある。
読書活動の推進に役立てられる教育ICTサービスの導入をご検討の皆様におすすめです。