電子書籍が新しい読書の選択肢に!読み放題型電子図書館「Yomokka!」活用校レポート
Yomokka!活用校レポート読書推進電子図書館
GIGA端末の導入から3年が経ちました。こどもたちの「個別最適な学び」「協働的な学び」を加速させるための効果的な端末活用の試みが、全国の学校現場で実践されています。
その中で、1人1台端末での新たな読書の選択肢として全国の小・中学校に導入いただいているのが、“いつでも、どこでも、好きなだけ!”をコンセプトに、ポプラ社が提供する読み放題型電子図書館「Yomokka!(よもっか!)」です。
こどもたちにとって電子書籍はまだ比較的新しいメディアであり、こどもたちにどのように使わせることが望ましいのか分からないといった声をいただくこともあります。
今回は、「Yomokka!」を特に積極的に活用していただいている学校の司書教諭の先生と学校司書の方々に、こどもたちと本との関わりをどのようにサポートされているのかお話をうかがいました。
インタビューした学校
神奈川県横浜市
緑園義務教育学校(横浜市立義務教育学校 緑園学園)
児童数 約1,100名
取材日:2024年9月27日
今回のインタビューでは、前期課程の先生にお話をうかがいました。
学校ホームページより
インタビューの背景
緑園義務教育学校の学校図書館にて行われた表彰式の様子(横浜市提供)
子どもたちの読書機会の充実に向けて、横浜市教育委員会とポプラ社は令和6年7月に連携協定を締結し、読み放題型電子図書館「Yomokka!」を市内9校で試行導入しています。
導入開始から間もなく、8月の1か月間で、試行校である緑園義務教育学校(前期課程)の児童の皆さんの電子書籍を読んだ冊数(※)が、「Yomokka!」を導入している全国の学校で一位になりました。
利活用に積極的に取り組んで下さったこと、更にこれからも市内の試行導入を牽引していただきたいことから、このたび特別に表彰をさせていただきました。
※注:8月期の各学校の児童生徒の総読書件数(「読む」ボタンが押された数)
読み放題型電子図書館「Yomokka!」試行導入の背景
お話をうかがった先生
司書教諭 坂田泰美先生
学校司書 鈴木貴子先生、南部玲子先生
左から鈴木先生、南部先生、坂田先生(学校提供)
学校が大事にしていること
-緑園義務教育学校様が大切にしている教育方針について教えてください。
坂田先生:当校で育てる子ども像として「自ら学び、考え、表現し、協働して課題解決をしながら、よりよい生き方を創造する子ども」があります。自分が疑問に思ったことを自分の力で解決する、自分なりの方法で表現する、といった力を育むことは、学校全体で大切にされている方針です。これがすなわち「読書力」「情報活用能力」でもあると思います。
読書についても、こどもたちが本を読んで感じたことを、媒体の特性や自分の得意なことをいかしながら表現できることをまず一番に考えています。
―学校図書館で表彰式を開催させていただきましたが、広々と開放的な空間であることに驚きました。
坂田先生:学校図書館はALL(Active Learning Library)と呼ばれています。校長先生の方針により、落ち着いて好きな本を読めるスペースはもちろんのこと、ビブリオバトルやプレゼン大会など様々なイベントができるように広いスペースが確保されています。
また、学校図書館を活用した学習にも力を入れており、こどもたちの主体的な学習づくりのための「学びのプロセス」が教科横断的に実施されています。本に限定されない、様々な媒体・情報源を目的に応じて使いこなせる力を育むことを重視しています。
学校図書館内に掲示されている資料では、グレードに応じた「学びのプロセス」が分かりやすく示されている(ポプラ社撮影)
読み放題型電子図書館「Yomokka!」導入の背景
―緑園義務教育学校様は、横浜市とポプラ社の取り組みが決まる前から、「Yomokka!」に興味を持っていただき、キャンペーン等でお試し利用もしてくださっていました。
坂田先生:お試し利用は、無償で使えるということでまずはやってみようと申し込みました。学校の蔵書に加えて、電子書籍で多くの本が読めるのはすごいことですよね。閲覧できる本もどんどん増えて(※)いますし。
(※注:2024年10月現在、38社の4,300冊以上の本が閲覧可能)
南部先生:今はまだ学校図書館の蔵書のほうが圧倒的に多いので、そちらが読書の中心ですが、電子書籍は1人1台の環境で気軽に読めるのが何より良いと思います。
―今回の試行導入がスムーズに進んだ理由は何でしょうか。
坂田先生:過去にお試し利用をして「Yomokka!」になじんでいた児童がいて、その様子を見ている先生がいたことは、今回の試行導入がスムーズに進んだ理由のひとつだと思います。その先生方とは、今回の導入にあたり、様々な議論ができたこともよかったです。
それから、夏休みの期間に、タブレットの持ち帰りができたこと。これは簡単なことではありませんでしたが、本校では特に管理職の先生方が、新しい取り組みに「いいじゃない、やってみなよ!」と背中を押してくれるので、タブレットの持ち帰りも「Yomokka!」の導入もとてもスムーズでした。
加えて、学校司書のお二方が、担任の先生方としっかり連携してくださっていることも、活用が進んだ大きな理由です。普段から学校図書館の蔵書について、こどもの思考を広げるために、授業のこういった場面で活用できるよ、という情報を提供してくださっていて、「Yomokka!」についても同様に働きかけてくださっています。
鈴木先生:学校図書館の蔵書の本の中でも、この本は「Yomokka!」にもありますよ、と先生方に呼びかけて、活用を促しています。
坂田先生:担任の先生も知らなかった新しい本に出会うと、こどもたちが変わっていくんです。こどもたちが変わるので、先生も変わらざるを得ない。そんな良い変化をいつも目の当たりにしています。
当初の懸念点
―導入に際して、心配な点などはありましたか?
坂田先生:ページをめくる良さなど、紙の本の読み方を知らない低学年の子たちをいきなり電子書籍を読める環境に置くことに不安はありました。タブレットで完結してしまうことで、逆に本離れ、活字離れが加速してしまうのではないかなど。
でも、いろいろな媒体を経験することで、その中で、自分の課題や表現のしかたに応じて使う媒体を変えていく力を、こどもたち自身に身に付けてほしいという想いがあり、全学年で導入しました。
鈴木先生:授業の中で学校図書館の本を読む際には、並行して紙の本の読み方をしっかり学べるよう、紙の本を読む時間としています。
「Yomokka!」を活用する具体的な場面
学校や家での活用シーン
4年生の児童が活用している様子(学校提供)
―学校での「Yomokka!」の具体的な活用シーンについて教えてください。
鈴木先生:朝読書の時間や、授業の中の隙間時間に活用されています。
2年生の担任の先生からは、「Yomokka!」なら「ちょっと読んでみようか」「ちょっと調べてみようか」と手軽に本を開けるので、習慣として調べる機会が増えたり、気軽に“次の本”にも手が伸ばせるのが良い、とお聞きしました。貸出中で読めないということが無いのも良い点です。友達が読んでいて「面白そう!」となった時にすぐに読めますし。
キーワード検索ができることで、調べ学習でつかえる本がすぐに見つかるのも嬉しいですね。その場で「Yomokka!」でぱっと本を開いて、目次を見て…と、欲しい情報をすぐに探せることが嬉しいです。
加えて、インターネットで検索すると様々な情報が出てきますが、正確性が判断できないものも多い中、本なら信頼できます。「Yomokka!」は掲載前に1冊1冊の本の内容を読んで確認をしていると聞いて、安心しています。
南部先生:お試し利用の時には、読み物が多かったので、授業で使える本があるかなというのは不安ではありましが、この1年で、掲載書誌がぐっと増えましたよね。
授業の中でタブレットを使う場面も増えました。例えば4年生国語「ごんぎつね」の授業では、新美南吉の他の作品を読む時には、学校図書館の本を人数分コピーして配ったり、近隣の図書館から借りたりしていました。GIGA端末になってからも、学校図書館の本をPDF化して、データで閲覧するというのが手間であることに変わりありませんでしたが、「Yomokka!」があれば皆で同時に新美南吉の作品が読めるので、すごく助かっています。
先生の働き方改革としても理にかなっていると思います。
―8月の利用は、夏休みの宿題での利用も大きかったのではないかと思います。どのような宿題を出されたのですか?
坂田先生:夏休みの課題で、前期課程(1年生から6年生)すべての学年で「読書」を宿題にしました。夏休みに読んだ本のベスト3位を書くもので、学年ごとに、レベルに合わせてワークシートも変えています。紙の本に加えて「Yomokka!」で読んでもOKとしたことで、読書の選択肢が格段に増えました。
1年生の宿題。紙の本と「Yomokka」のどちらで読んだかも記載。
友達へのおすすめ度と、読んだ感想を書く欄も。感想もしっかり書けている。(学校提供)
4年生の宿題(学校提供)
6年生の宿題(学校提供)
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
著者 J.K.ローリング / 日本語版監修・翻訳 松岡佑子 / 静山社
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
著者 J.K.ローリング、スティーブ・クローブス / 日本語版監修・翻訳 松岡佑子 / 静山社
こどもたちの反応
こどもたちの反応
6年生の児童が活用している様子(学校提供)
―実際に使っているこどもたちの様子はいかがでしょうか。
坂田先生:当校の児童生徒は、もともと家庭に本が沢山あり、本を読むのが好きな子が多いと思います。8月に「Yomokka!」で家庭で本が沢山読まれたのも、保護者の皆さんの協力があったからだと思います。
一方で、本が好きではない子もいます。児童が作成したランキングに、「今まで本が好きではなかったのに好きになった」というコメントがあるのを見て嬉しくなりました。
こどもたちは、きっかけさえ与えてあげれば、興味をもって活用してくれるんですよね。
「Yomokka!」で本が好きになって、本屋さんで本を買ってもらったんだよ、と報告してくれる子もいました。
鈴木先生:読書が苦手な子の中でも、「先生、どんな本読んだらいい?」と学校図書館に聞きに来てくれる子はよいのですが、そうでない子ももちろんいます。そういった子が、読書への入り口を絶たれてしまうのはとても勿体ないことなのですが、「Yomokka!」ならキーワード検索で探してすぐに本を見つけて読めます。「今知りたい!」という子にとって、誰かに教えてもらって探すというタイムラグが煩わしいこともありますから、検索機能はとても良いと思います。
南部先生:普段からこどもたちに声かけをしていますが、学校図書館で普段本を借りない子が「Yomokka!」で読んだよ!と言ってくれることがあります。溜めたポイントで本棚を飾ったり、ガチャをまわしたりするのが楽しい!という声も。
もちろん紙の本で読むのが好きな子もいます。
今後の展望
今後の活用について
―今後考えていらっしゃるサービスの活用について教えてください。
坂田先生:2学期が始まったばかりなので、今後は授業で活用していきたいです。並行読書でも調べ学習でも活用できそうです。
インタビューの様子(ポプラ社撮影)
電子書籍がこどもたちの新しい読書の選択肢に
Yomokka!トップ画面イメージ
今回の取材では、全国でも特に「Yomokka!」を活用いただいている学校の、こどもたちの読書を支えていらっしゃる司書教諭の先生・学校司書の方々に、どのようにこどもたちの活用をサポートしていらっしゃるかお話をお聞きしました。
授業で先生方の負担を減らし、より「読みやすく、調べやすい」環境をととのえるために、そしてこどもたちの読書の選択肢が増え、もっと本が好きになるように、と日々様々な働きかけをしてくださっていることを知ることができました。
冒頭の坂田先生のお話の通り、こどもたちの自主性、協働性、創造性を尊重している緑園義務教育学校の教育方針の中で、「Yomokka!」が効果的に活用されていることが分かりました。
わたしたちは、「Yomokka!」がこどもたちが本を好きになるきっかけや、学校図書館の課題解決の一助になることを願っています。
こどもたちの読書や学習の選択肢を増やし、豊かな読書体験が届けられるよう、今後もサービスの発展に尽力してまいります。
2024年11月2日(土)NHK総合 「NHK NEWS おはよう日本」の読書週間特集にて、緑園義務教育学校で読み放題型電子図書館「Yomokka!」が活用される様子が紹介されました。
●横浜市教育委員会とポプラ社の連携協定について(参考)
子どもの読書機会の充実に向け、横浜市教育委員会とポプラ社が連携協定を締結。過大規模校等9校の学校図書をより豊かにするため、読み放題型電子図書館「Yomokka!(よもっか!)」の試行導入開始!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000856.000031579.html
●緑園義務教育学校の表彰式について(参考)
読み放題型電子図書館「Yomokka!(よもっか!)」を試行導入中の緑園義務教育学校(前期課程) をポプラ社が表彰
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000902.000031579.html