不読率とは?読書推進の取り組みを分かりやすく解説!
読書推進電子図書館平成13年に成立した「子どもの読書活動の推進に関する法律」を筆頭に、読書活動は、子どもたちの学びのために重要なものと位置づけられています。子どもたちに読書が必要とされる理由として、読書活動を通じて言葉を学ぶだけでなく、読解力・想像力・思考力・表現力・感性などを養い、生きる力を身につけるために役立つと考えられていることが挙げられます。読書を通じて多くの知識を得たり、多様な文化への理解を深めたりすることも期待されています。
この記事では、文部科学省が令和5年3月に公表した第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に基づいて、子どもたちの読書推進のための取り組みや課題とされている不読率の低減について解説します。
小・中学校での読書活動の現況
児童生徒の読書活動を推進するには、まずは現況を押さえておくことが重要です。文部科学省が定めた目標や不読率の割合について解説します。
文部科学省が定めた不読率の目標
前述の第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」によれば、不読率とは1か月に本を1冊も読まない子どもの割合を指します。平成30年に公表された第四次基本計画において、令和4年度の段階で不読率を、小学生2%以下、中学生8%以下、高校生26%以下とするという目標が掲げられました(小学4年生から高校3年生を対象)。
不読率の割合
「第68回学校読書調査(2023年)」(公益社団法人全国学校図書館協議会)によると、5月における1か月間の平均読書冊数は、平成13年度と令和4年度を比較すると、小学生6.2冊から13.2冊、中学生2.1冊から4.7冊、高校生1.1冊から1.6冊となっています。いずれの校種においても、読書量は平成13年度より令和4年度のほうが多い傾向が見られます。
しかし、不読率は令和4年度で、小学生6.4%、中学生18.6%、高校生51.1%となっており、いずれの校種でも前述の目標に達していないのが現況です。
文部科学省が掲げる読書活動推進の4つの方針
第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」では、以下の4つの基本的な方針が掲げられています。
- .不読率の低減
- .多様な子どもたちの読書機会の確保
- デジタル社会に対応した読書環境の整備
- 子どもの視点に立った読書活動の推進
自治体や家庭、民間団体の取り組みも重要ですが、ここでは主に学校現場における読書推進について解説します。
1.不読率の低減
不読率の低減のためには、すべての児童生徒が本に接する機会を増やしていくことが大切だと考えられます。具体的には、学校図書館におけるオリエンテーションの実施、読書に興味がない児童生徒に対する親しみやすいイベントの開催、探究学習などの体験活動と絡めた取り組み、低年齢の児童に対する読み聞かせの実施などが挙げられます。
子どものころに読書習慣の形成を促すことや、電子書籍なども取り入れた多様な読書体験の機会を提供するなど、読書を常に身近なものとして捉える環境の整備がすすめられています。
2.多様な子どもたちの読書機会の確保
児童生徒を取り巻く読書環境は様々であり、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現のため、個々の児童生徒の状況に応じた読書環境の提供が求められます。読書活動の推進にあたっては、読書バリアフリー法の観点からも配慮が必要です。
具体的には、視覚障がい者が利用しやすいアクセシブルな書籍・電子書籍の充実や、日本語能力に応じた支援を必要とする児童生徒に対しての多言語対応、LLブックや大活字本などを含む図書館資料の整備などが挙げられます。
3.デジタル社会に対応した読書環境の整備
非常時などにおいても、継続的に図書等にアクセスできる環境を整えるためには、デジタル技術を活用した読書機会の提供も検討していくことが大切です。いつでも、どこでも本と触れ合える環境を整えるために、読書環境のデジタル化が重要です。
具体的には、電子書籍・デジタルアーカイブ・電子版の資料等の充実、オンラインを通じた読み聞かせ・読書会等のイベントの提供などが考えられます。
4.子どもの視点に立った読書活動の推進
一口に読書推進といっても、児童生徒の年齢や発達段階に応じて必要な活動は様々です。一人ひとりが読書を通じた学びの機会を得て、主体的な読書活動につなげていくには、子どもの視点に立った取り組みも必要だと考えられています。
子どもの最善の利益を実現するためには、子どもたちに読んでほしい本だけでなく、子どもたち自身が読みたい本を、好きな時間に、好きな場所で主体的に読める機会を提供できるように支援していくことが重要です。図書委員会や読書クラブなど、学校図書館にまつわる活動を行っている児童生徒との連携はもちろんのこと、児童生徒に対するアンケート調査の実施など、様々な方法を通じて読書活動に児童生徒の意見を反映させていくことが求められています。
読書への関心を高めるための取り組み
児童生徒が生涯を通じて、読書に親しむ習慣を身につけるには、学校という存在は重要な役割を担っていると考えられています。学校教育法における普通教育の目標の一つに、「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」と定められている点からも、学校教育での読書活動は重視されているといえるでしょう。
ここでは、読書活動の推進における学校現場の取り組みについて解説します。
学校で行いたい取り組み
児童生徒の言語能力の育成を図るためには、まず国語教育における言語活動の充実が挙げられます。従来の国語教育に加え、ICTを活用した調べ学習や探究学習の取り組みなども、児童生徒が知的好奇心を抱き、読書に親しむ入り口になる可能性があるでしょう。
また、学校図書館の計画的な利用、図書館機能の活用、自発的な読書活動を行う機会の提供、資料を活用した情報収集なども大事なポイントです。授業や全校一斉での読書活動の推進など、日々の学習活動の中で本に触れる機会を生み出してみましょう。
学校図書館の整備
児童生徒が十分な読書機会を得るには、学校図書館の整備が欠かせません。学校図書館には、読書活動や読書指導の場である「読書センター」としての機能と、児童生徒の学習活動を支援したり、授業の内容を豊かにしたりする「学習センター」としての機能、児童生徒や教職員の情報ニーズに対応したり、児童生徒の情報の収集・選択・活用能力を育成したりする「情報センター」としての機能の3つの機能があります。開館時間の確保はもちろんのこと、閲覧できる書籍・資料の充実と、電子書籍の導入を含むデジタル社会に対応した読書環境の整備が、児童生徒の読書機会を増やすことにつながるでしょう。
学校図書館運営における課題の改善
本に親しむ機会が少ない児童生徒にとって、学校図書館における司書の存在は重要です。司書教諭は、学校図書館資料の選択・収集・提供のほか、学校図書館を活用した教育活動の企画の実施など、学校図書館の運営・活用について中心的な役割を担っていますが、司書教諭が学級担任を兼務している場合、思うように図書館業務にリソースを割けないことも課題として挙げられます。
そのため、読書活動を推進するには司書教諭の役割を理解し、授業負担の軽減を図ることが重要になります。また、学校図書館の運営の改善や、児童生徒・教員の学校図書館の利用を促進するため、学校司書を配置することが望まれています。
まとめ:児童生徒の関心を引き出す読書活動を推し進めよう
学校現場における読書推進を図るには、児童生徒の状況に合わせて、読書環境を整備し、読書習慣を定着させる取り組みを行っていくことが大切です。
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